訪日外国人数は2025年に4,268万人へ達し、過去最高を更新しました。
2026年も上半期だけで2,100万人を超えています。
宿泊業界で働く人や、これから業界を目指す人にとって、この数字は市場の大きさを測る基礎資料になります。
本記事では日本政府観光局(JNTO)が発表する「訪日外客統計」の最新データを正確に整理します。
そのうえで、数字が宿泊業の仕事にどう影響するかまで読み解きます。
訪日外客統計とは|JNTOが毎月発表する訪日外国人数の公式データ
訪日外客統計で分かること(総数・国籍別・月別)
訪日外客統計は、日本政府観光局(JNTO)が毎月発表する公式統計です。
日本を訪れた外国人旅行者の数を、総数・国籍/地域別・月別で確認できます。
集計対象は法務省の出入国データに基づく外国人正規入国者です。
日本に住む永住者などは除かれ、観光やビジネスで訪れた旅行者が中心となります。
公表されているデータは2003年までさかのぼれます。
20年以上の時系列で市場の変化を追える点が、この統計の大きな価値です。
推計値・暫定値・確定値の違いと発表スケジュール
訪日外客統計の数値は、段階的に確定していきます。
毎月の発表時点では推計値として公表されます。その後、暫定値、確定値の順に更新されます。
直近の月の数字を引用する場合は、後日修正される可能性がある点に注意が必要です。
最新データ|2026年上半期の訪日外国人数
月別の訪日外国人数の推移(2026年1月〜6月)
2026年1月から6月までの訪日外国人数は、累計2,108万4,752人でした。月別の推移は次の通りです。
| 月 | 訪日外国人数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 1月 | 359万7,881人 | マイナス4.9% |
| 2月 | 346万6,848人 | プラス6.4% |
| 3月 | 361万9,159人 | プラス3.5% |
| 4月 | 369万2,364人 | マイナス5.5% |
| 5月 | 355万9,900人 | マイナス3.6% |
| 6月 | 314万8,600人 | マイナス6.8% |
毎月310万人から370万人の水準で推移しています。単月で350万人を超える月が4回あり、高水準が続いていることが分かります。
前年同月比で見る伸び率の傾向
上半期の累計は、前年同期の2,151万8,575人と比べて2.0%の減少でした。一見すると市場の縮小に見えます。しかし中身を見ると印象は大きく変わります。
減少の要因は、後述する中国市場の大幅減にほぼ集約されます。中国を除いた訪日外国人数は、前年同期比で約13%の増加となります。市場全体としては、むしろ力強い成長が続いている状態です。総数だけを見て「インバウンドは頭打ち」と判断するのは早計だと言えます。
国・地域別の訪日外国人数ランキングと動向
訪日外国人数が多い国・地域トップ5
2026年上半期の国・地域別ランキングは次の通りです。
| 順位 | 国・地域 | 2026年上半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 韓国 | 567万5,061人 | プラス18.6% |
| 2位 | 台湾 | 397万2,194人 | プラス20.9% |
| 3位 | 中国 | 205万8,192人 | マイナス56.4% |
| 4位 | 米国 | 182万1,725人 | プラス7.1% |
| 5位 | 香港 | 129万8,450人 | プラス2.2% |
上位5市場だけで全体の約7割を占めます。
東アジアと米国が訪日市場の中核であることは、2026年も変わっていません。
大きく伸びている市場(韓国・台湾など)
最も勢いがあるのは韓国と台湾です。
韓国は上半期だけで567万人を超え、前年同期比18.6%増となりました。1月には単月で117万人を記録しています。台湾も20.9%増と、上位市場の中で最も高い伸び率です。
東南アジアの成長も見逃せません。インドネシアは13.0%増、ベトナムは8.7%増と堅調です。フィリピンも5.8%増となっており、リピーター層の拡大がうかがえます。
減少している市場とその背景(中国など)
中国は前年同期比56.4%減と、大幅な減少が続いています。2026年上半期は毎月、前年同月比で45%から60%の減少となりました。かつて訪日市場の最大勢力だった中国は、現在3位まで後退しています。
ここで重要なのは、中国の減少を市場全体の縮小と混同しないことです。前述の通り、中国を除く市場は2桁成長を続けています。特定市場への依存度が下がり、市場構成が多極化しているのが2026年の実像です。
欧米豪・東南アジア市場の動き
米国は182万人で7.1%増と、アジア以外で最大の市場です。豪州も59万人で4.6%増となりました。タイは70万人で3.5%増です。欧米豪と東南アジアは、東アジアほどの規模はないものの、着実に積み上がっています。
これらの市場は滞在日数が長い傾向があるとされます。人数以上に宿泊需要への貢献が大きい市場と考えられます。
過去20年の推移で見る訪日外国人数の変化
2003年からの長期推移とコロナ前(2019年)との比較
年別の訪日外国人数の推移は次の通りです。
| 年 | 訪日外国人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2003年 | 521万1,725人 | ビジット・ジャパン事業開始 |
| 2013年 | 1,036万3,904人 | 初の1,000万人超え |
| 2019年 | 3,188万2,049人 | コロナ前のピーク |
| 2020年 | 411万5,828人 | コロナ禍で急減 |
| 2023年 | 2,506万6,350人 | 回復期 |
| 2024年 | 3,687万148人 | 2019年を超え過去最高 |
| 2025年 | 4,268万3,837人 | 2年連続で過去最高 |
出典 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」
2003年の521万人から、2025年の4,268万人まで、市場は約8倍に拡大しました。コロナ禍の2020年には411万人まで落ち込みましたが、そこからの回復は急速でした。
回復から成長フェーズへ|データが示す転換点
転換点は2024年です。この年に3,687万人となり、2019年のピークを初めて上回りました。2025年はさらに伸び、2019年比で約1.3倍に達しています。
データが示すのは「コロナ前への回復」がすでに完了したという事実です。現在の市場は回復局面ではなく、過去に前例のない成長局面にあります。宿泊業界の人材需要を考えるうえで、この認識は出発点になります。
訪日外客統計から読み解く宿泊業界への影響
インバウンド需要と宿泊業の求人動向の関係
訪日外国人の増加は、宿泊施設の稼働率上昇に直結します。年間4,000万人を超える旅行者の大半が、ホテルや旅館に宿泊するためです。稼働率が上がれば、フロント・客室清掃・レストランなど、あらゆる職種で人手が必要になります。
市場が2019年比1.3倍の規模に拡大した一方、宿泊業界の人材はコロナ禍で大きく流出しました。需要の拡大と人材の不足が同時に起きているのが現在の構図です。働く側から見れば、求人が豊富で選択肢の多い状況が続くと考えられます。
国籍構成の変化で変わる現場のスキルニーズ(語学・接客)
国別データの変化は、現場で求められるスキルに直結します。韓国と台湾で上半期965万人に達する現在、韓国語や中国語(繁体字圏)の対応力は大きな武器になります。米国が4位に定着していることから、英語の需要も引き続き高い水準です。
一方で、特定の言語だけに頼る接客には限界があります。上位5市場だけで4つの言語圏にまたがるためです。翻訳ツールの活用力や、言語に依存しない接客の設計力も評価される時代になっています。語学が完璧でなくても活躍の余地は十分にあります。
繁忙期・閑散期の変化と働き方への影響
2026年上半期の月別データには、もう一つの特徴があります。最少の6月でも314万人、最多の4月でも369万人と、月ごとの差が小さいことです。桜や紅葉の時期に偏っていたかつての需要は、通年型に近づいています。
需要の平準化は、働く人にとって好材料です。閑散期のシフト減に悩まされにくくなり、年間を通じた安定した働き方がしやすくなります。採用側も通年雇用を前提とした求人を出しやすくなります。
訪日外客統計の調べ方・活用方法
一次データの入手先と更新タイミング
訪日外客統計は、日本政府観光局(JNTO)の公式サイトで無料公開されています。「国籍/月別 訪日外客数」のExcelファイルでは、2003年から最新月までの全データを一括で確認できます。毎月中旬頃に前月分の推計値が追加されます。
面接前に志望施設の主要顧客層を調べる、といった使い方も有効です。たとえば韓国からの旅行者が多いエリアの施設なら、韓国語学習の意欲は具体的なアピール材料になります。
データを見るときの注意点
利用時には次の3点に注意が必要です。
・直近月の数値は推計値であり、後日更新される場合があります ・国籍ベースの集計のため、居住地とは一致しない場合があります ・全国の合計値であり、地域ごとの偏りは別の統計での確認が必要です
引用する際は、出典として「日本政府観光局(JNTO)」の明記が求められています。
まとめ|訪日外客統計は宿泊業で働く人の羅針盤
訪日外客統計の最新データが示す事実を整理します。
・2025年は4,268万人で2年連続の過去最高を記録 ・2026年上半期は2,108万人で、中国を除けば前年比約13%増 ・韓国・台湾が2割増と成長を牽引し、市場構成は多極化 ・月別の需要差が縮小し、通年型の市場に変化
インバウンド市場は回復期を終え、成長期に入りました。市場の拡大は、宿泊業界で働く人の雇用機会と待遇改善の追い風になります。毎月更新される訪日外客統計を定点観測すれば、業界の今を数字で把握できます。キャリアを考える判断材料として、活用してみてください。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」

